23/05/19 空っぽ人間

日記
日記

運動が苦手だった。

昔から、走るのも持久走も何もかもが不得手だった。

体力も人並み以下。鬼ごっこではすぐ捕まる。
サッカーではボールに追いつけない(これは他のやつがクラブ入ってたのもあるけど)。

小学校というのは残酷で、純粋に力が強い奴は、強い。

勉強は多少できたが、上には上がいた。
運動もクラストップレベル、勉強も大体100点。

天は二物を与える。その事実を齢7歳の内に知っていた。
私には根っこの部分で劣等感が染み付いているのだ。

そんな私にも、他の人にはできない特技があった。
ピアノだ。

小さい頃から音楽教室に通っていた私は、クラス1演奏がうまかった。
卒業式に、オリジナルの歌を書き下ろしたほどだ。

――逆に言えば、それしかなかった。

中身が空っぽだった。理由がなかった。
将来の夢はピアニストだと、親や先生にいい顔をするために書いていた。

1日1時間、必ずピアノ練習をさせられた。習い事も多かったが、何年もやり続けた。
書道、作曲、英会話。どれも嫌いだった。

やりたくなさが転じて、いつもトイレに逃げ込むようになった。
大人が強く干渉できない、子供にとってのセーフゾーンだった。

ピアノは好きなはずだった。義務になってから、嫌いになり始めた。

中学校に入り、本格的に部活が始まった。
時間がなくなった。

自由がなくなっていた。

だから捨てた。
全て、捨てた。

学校も、習い事も、ピアノすらも。

そうして、自分を構成していたものが消え去って。

あとに残ったのは、大人の顔色を伺って、嘘をつき続ける精神性だけだった。

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