運動が苦手だった。
昔から、走るのも持久走も何もかもが不得手だった。
体力も人並み以下。鬼ごっこではすぐ捕まる。
サッカーではボールに追いつけない(これは他のやつがクラブ入ってたのもあるけど)。
小学校というのは残酷で、純粋に力が強い奴は、強い。
勉強は多少できたが、上には上がいた。
運動もクラストップレベル、勉強も大体100点。
天は二物を与える。その事実を齢7歳の内に知っていた。
私には根っこの部分で劣等感が染み付いているのだ。
そんな私にも、他の人にはできない特技があった。
ピアノだ。
小さい頃から音楽教室に通っていた私は、クラス1演奏がうまかった。
卒業式に、オリジナルの歌を書き下ろしたほどだ。
――逆に言えば、それしかなかった。
中身が空っぽだった。理由がなかった。
将来の夢はピアニストだと、親や先生にいい顔をするために書いていた。
1日1時間、必ずピアノ練習をさせられた。習い事も多かったが、何年もやり続けた。
書道、作曲、英会話。どれも嫌いだった。
やりたくなさが転じて、いつもトイレに逃げ込むようになった。
大人が強く干渉できない、子供にとってのセーフゾーンだった。
ピアノは好きなはずだった。義務になってから、嫌いになり始めた。
中学校に入り、本格的に部活が始まった。
時間がなくなった。
自由がなくなっていた。
だから捨てた。
全て、捨てた。
学校も、習い事も、ピアノすらも。
そうして、自分を構成していたものが消え去って。
あとに残ったのは、大人の顔色を伺って、嘘をつき続ける精神性だけだった。


